「セルフ・キャリアドック」とは、企業がその人材育成ビジョン・方針に基づき、キャリアコンサルティング面談と多様なキャリア研修などを組み合わせて、体系的・定期的に従業員の支援を実施し、従業員の主体的なキャリア形成を促進・支援する総合的な取組み、また、そのための企業内の「仕組み」のことをいいます。
入社時や役職登用時、育児休業からの復職時など、企業ごとに効果的なタイミングでキャリアコンサルティングを受ける機会を従業員に提供することにより、従業員の職場定着や働く意義の再認識を促すといった効果が期待されるほか、企業にとっても人材育成上の課題や従業員のキャリアに対する意識の把握、ひいては生産性向上につながるといった効果が期待されます。(厚生労働省HPより)
セルフ・キャリアドック制度を導入するメリット
企業がセルフ・キャリアドック制度を導入した場合のメリットは何でしょうか?
いまさらですが、厚生労働省の令和5年雇用動向調査結果の概況によれば、日本の生産年齢人口(15~64歳)は2020年から2040年までに約1,531万人減少する見込みであることがわかっています。企業にとっては今後さらなる人手不足が想定されるということになります。そこで企業として考えなければならないことのいくつかの中に、自分の会社の魅力を上げ社員に長く勤務してもらうことがあります。
一方で実態はといえば、20代の社員に対するアンケート調査結果に衝撃的な内容のものがあります。エン・ジャパン「キャリアプラン意識調査(2024年版)」によれば、20代社員の86%が、今後の自身のキャリアに不安があると回答。同じくエン・ジャパンの「仕事を通じた成長実感に関するレポート(2023年版)」では、32%が成長を実感できていないと回答し、Job総研「2022年 キャリアに関する意識調査」では41.1%の社員が転職の可能性があると回答しています。
企業としては、職場の環境、会社の魅力、働き方の改善などを進めていても一人一人の働くことに対する考え方や価値観までは拾い上げることは難しい面があり、大変もどかしいのが実態です。
セルフ・キャリアドック制度では、社員一人一人の仕事、キャリアに関する考え方、本音を真摯な態度で受け止めることができます。上司や先輩、同僚に相談しずらい。人事担当者へ相談することがいいのかどうかわからないようなキャリアに関する、漠然とした不安などを受け止めることができます。一人ひとりの社員の考えを丁寧に傾聴し、マイクロカウンセリングと呼ばれるきめ細やかな対応を通じて社員の方々の本音や考え方を整理し、これまで拾い上げらなかった声を時に会社の制度としても取り上げる機会を作り出すことができます。このような活動は社員の満足度の向上の一役を担うことにつながり、突然の退職・離職を防ぐ効果も期待できます。
ワークエンゲージメントを上げる効果
産業・組織心理学研究(2016 年,第 29 巻,第 2 号,73-86 Japanese Association of Industrial/Organizational Psychology Journal, 2016, Vol. 29, No. 2, 73-86原著論文キャリア自律を促進する要因の実証的研究 堀内泰利(筑波大学)岡田昌毅(筑波大学))によれば、社員のキャリア自律と個人のパフォーマンス、ワークエンゲージメント、学習意欲、仕事充実感、人生満足度との相関性が認められることが示されています。
ところでこのキャリア自律とは何でしょう。この研究によればキャリア自律とは、簡単に言えば「自分のキャリアを他者や組織任せにせず、自分自身で主体的に考え、選択し、行動していく姿勢や能力」を指す考え方です。この考え方では、昇進や配属といった組織から与えられるキャリアの枠組みに受け身で従うのではなく、個人が自分の価値観・強み・関心を踏まえてキャリアの方向性を見出し、必要な学習や経験を積極的に獲得していくことが重視されます。
つまりキャリア自律の促進は社員の満足度にプラスに働くということです。パーソル総合研究所 「従業員のキャリア自律に関する定量調査」2021年が堀内教授、岡田教授の研究成果を分析した結果以下のようにまとめています。

出所: パーソル総合研究所 従業員のキャリア自律に関する定量調査(2021) データの詳細は、パーソル総合研究所のサイトにあります。
適切でかつ継続的なセルフ・キャリアドックの導入、運営が個人パフォーマンスを上げ、仕事の充実感も、学習意欲、ワークエンゲージメントにプラスに働くことがおわかりいただけると思います。離職をなんとかしたいとお考えの経営者層の皆様、管理職の皆様にはセルフ・キャリアドックの導入の検討をお勧めします。
セルフ・キャリアドック制度の詳細については、厚生労働省の紹介ページでもご覧いただけます。またTOMONI Careerでは個々の企業のご担当者様、あるいは経営層の皆様のお話を伺ったうえで制度導入の計画づくり、導入の支援また、すでに導入済みであるけども再構築が必要とお考えの場合の支援にも対応させていただきます。